7kmのジョギングで左膝と足首を痛めてしまい、NAHAマラソンに向けた練習は「走ること」から「サポーターを巻いて歩くこと」へと切り替えざるを得なくなりました。長年運動してこなかった50代の関節は、僕が想像していた以上に脆く、回復には途方もない時間がかかります。

走れない焦りを少しでも紛らわせるため、そしてせっかく12kg落とした体重(60kg)をキープするため、休日の僕は那覇市内でもひときわ起伏の激しい「首里」の坂道や石畳を、大股で2〜3時間歩き回る泥臭いトレーニングを続けています。

しかし、沖縄の強い日差しの中、急勾配の坂を上り下りし続けると、心拍数は跳ね上がり、ウェアは絞れるほど汗を吸い、そして何よりかばいながら歩いている膝や腰が徐々に悲鳴を上げ始めます。今回は、そんな歩き疲れた50代の僕が、首里の街を歩く中で見つけた自分だけの「止まり木」、そして静かな一人時間を過ごせる場所『ROKKAN COFFEE SHURI(ロッカンコーヒー シュリ)』でのリアルな休息の記録をお届けします。

1. 汗だくの50代を優しく迎えてくれる「首里の止まり木」

首里城周辺の石畳や、当蔵町の心臓破りの坂道を1時間半ほど歩き続けた日の午後。ふくらはぎの筋肉はパンパンに張り詰め、首筋からはとめどなく不快な汗が流れ落ちていました。膝の奥には、じんわりとした鈍い重さが蓄積し始めています。

「そろそろどこかで座って、関節と心臓を休ませないと限界かもしれない」

そんなふうに足を引きずりながら歩いていた時、首里の静かな通り沿いにひっそりと佇む一軒のカフェを見つけました。それが『ROKKAN COFFEE SHURI』でした。コンクリート打ちっぱなしのスタイリッシュな外観でしたが、不思議と周囲の古い街並みに溶け込んでおり、観光客向けの派手な看板もありません。

「汗だくのおじさんが一人で入っても大丈夫だろうか」と少し躊躇しましたが、ガラス越しに見える落ち着いた店内の雰囲気に背中を押され、そっと重い扉を開けました。

店内は、外の強烈な熱気と喧騒が嘘のように静かで、深く焙煎されたコーヒーの香ばしい匂いが漂っていました。冷えすぎない心地よい冷房の風が、火照った身体を優しく包み込んでくれます。カウンター越しに迎えてくれたスタッフの方も、僕のような一人客を自然な距離感で受け入れてくれ、張り詰めていた緊張の糸が一気に解けるのを感じました。

2. 葛藤の末に頼んだ「かき氷」とブラックコーヒーの至福

カウンターで注文を済ませ、一番端の席に腰を下ろしました。体重72kgから60kgへの過酷な減量を経て、日々の食事を「腹八分目」に制限している僕にとって、外食や甘いものは常にリバウンドの恐怖と隣り合わせです。しかし、この日は2時間近く首里の坂を歩き回り、全身の熱がどうしても引きませんでした。

「今日くらいは、火照った身体を中から冷やしてあげよう。生クリームたっぷりのケーキではなく、氷なら罪悪感も少ないはずだ」。そんな自分への都合のいい言い訳を頭の中で並べながら、僕はブラックのアイスコーヒーと一緒に「かき氷」を注文していました。

運ばれてきたアイスコーヒーと、涼しげに盛られたかき氷。まずはグラスに口をつけ、冷たいブラックコーヒーを喉の奥へ流し込みます。スッキリとした苦味とフルーティーな酸味が、カラカラに乾いた身体に染み渡ります。

そして、スプーンでかき氷をすくい、口へ運びました。シャリッとした冷たさと、優しく上品な甘さが口いっぱいに広がり、歩き疲れた脳の奥がじんわりと解けていくのを感じました。コーヒーのビターな味わいと、かき氷の冷たい甘さ。この交互に繰り返されるコントラストは、汗を流して坂を上り切った者にしか味わえない、最高のご褒美でした。

冷たい氷が胃の中へ流れ込んでいく感覚を味わいながら、深く息を吐き出しました。酷使した太ももの筋肉が、椅子のクッションに沈み込んでゆっくりと弛緩していくのが分かります。「今日もよく歩いたな」。そんな小さな達成感が、コーヒーの香りとともに胸の奥に広がっていきました。

3. 走れない焦りを鎮める、静かな一人時間の価値

ROKKAN COFFEE SHURIの店内には、静かなBGMが微かに流れているだけで、過剰な話し声や騒音はありません。僕はスマートフォンでSNSを開くこともせず、ただぼんやりと窓の外の首里の街並みを眺めたり、コーヒーの余韻を確かめたりしながら、贅沢な空白の時間を過ごしました。

膝を痛めてからというもの、僕の心の中には常に「練習メニューが予定通りにこなせない」「本番に間に合わないのではないか」という焦りと恐怖が渦巻いていました。夕暮れに颯爽と走る同世代のランナーを見るたびに、情けない気持ちになったものです。

しかし、こうして静かなカフェで一人きりになり、かき氷で身体を冷やしながら自分の呼吸を整えていると、焦って自分を追い込むことの無意味さに気づかされます。「50代の脆い足腰なのだから、立ち止まって当然だ。今は歩くための筋肉をじっくりと育てる時期なんだ」と、自分の現状を素直に受け入れられるようになっていくのです。

僕にとってこのカフェでの時間は、単なる肉体的な休憩ではなく、ささくれたメンタルを平坦にリセットし、再び前を向いて歩き出すための「大切な治療の時間」になっていました。

4. まとめ:休足日を豊かにする、那覇の街の包容力

グラスの氷がすっかり溶け切る頃、僕の膝の熱や、ふくらはぎの重だるさは少しだけ和らいでいました。席を立ち、「ごちそうさまでした」と伝えて外に出ると、夕暮れの那覇の街には心地よい風が吹き始めていました。

単身赴任の生活は孤独です。ましてや怪我をして走れなくなると、部屋に引きこもってふさぎ込んでしまいそうになります。しかし、那覇の街には、歩き疲れた50代の男を静かに受け入れてくれる、ROKKAN COFFEE SHURIのような素晴らしい止まり木があります。

NAHAマラソン本番まで、残された時間は少なくなってきました。焦る気持ちは痛いほどありますが、時にはこうしてカフェで美味しいコーヒーとかき氷を味わい、心と身体をいたわる「豊かな休足日」を挟みながら。これからも自分のペースで、首里の坂道を一歩ずつ歩み続けていこうと思います。


ROKKAN COFFEE SHURI|店舗情報

店名
rokkan COFFEE SHURI (ロッカン コーヒー シュリ)

住所
〒903-0812
沖縄県那覇市首里当蔵町2-14 やまごうビル1F

電話番号
098-943-4399

営業時間
6:00~18:00

定休日
最新の営業情報は、来店前に公式情報をご確認ください。

アクセス
ゆいレール「儀保駅」から徒歩約7分。「首里駅」からだと徒歩約9分。
首里城からも徒歩5分程度で着くので立ち寄りやすいです。

駐車場
あり
※台数に限りがあるため、満車の場合は近隣のコインパーキングの利用がおすすめです。

支払い
クレジットカード・電子マネー・QRコード決済に対応。

席
カウンター席あり/全席禁煙

予算の目安
1,000〜2,000円程度

ひとこと
首里城周辺を歩いたあとに、コーヒーを飲みながらゆっくり休める一軒。早朝6時から営業しているので、首里散策のスタートにも立ち寄りやすいカフェです。