本州から沖縄・那覇に単身赴任して、気づけば一年が過ぎました。過去最重量の72kgだった僕は、食事の工夫とウォーキングを重ねて60kgまで減量し、現在は「NAHAマラソン完走」という無謀とも言える目標に向かってジョギングを続けています。

しかし、ここ最近の僕を最も苦しめているのは、走る距離やタイムの壁ではなく、50代という年齢が突きつける「絶望的な回復力の遅さ」でした。

若い頃なら、少し無理をして身体を動かしても、一晩ぐっすり眠れば翌朝にはケロリとしていたものです。ところが今は違います。夕暮れの新都心公園を少し長めに走った翌日は、太ももやふくらはぎに鉛が詰まっているような重だるさが残り、ひどい時はその重さが2日、3日と蓄積していきます。特に先日、調子に乗って7kmを走って左膝と足首を痛めてからは、「このまま疲れが抜けきらない状態で練習を続ければ、取り返しのつかない怪我をして本番のスタートラインにすら立てないのではないか」という恐怖が常に付き纏うようになりました。

それに加えて、沖縄の長くて過酷な夏から秋にかけての湿気は、ただ生活しているだけでも50代の体力をじわじわと削っていきます。鍛えることよりも、休んで回復させることの方が遥かに難しい。その現実を痛感した僕は、少しでも質の高い休息をとるための方法を模索し始めました。

1. 疲れが抜けない僕が、那覇のイオンで立ち止まった理由

「寝る時の服装を変えれば、少しは疲れが取れやすくなるのだろうか?」

そんな藁にもすがるような思いを抱えながら、休日にイオン那覇店へ日用品の買い出しに行った時のことです。衣料品コーナーを何気なく歩いていた僕の目に、「疲労回復をサポートする」といった文言がプリントされたパッケージが飛び込んできました。トップバリュのリカバリーウェア「EXセリアント」でした。

これまでも、ネットや雑誌でスポーツブランドが販売している高機能なリカバリーウェアの存在は知っていました。しかし、上下セットで1万円や2万円もするような代物は、単身赴任の限られたお小遣いでやり繰りしている僕にとって、簡単に手が出せるものではありません。

一方、目の前にあるEXセリアントの半袖Tシャツの価格は本体価格2,980円(税込3,278円)。スポーツブランドに比べれば圧倒的に安いですが、ただの部屋着のTシャツとして考えれば決して安い買い物ではありません。

「本当に効果があるのだろうか? プラシーボ効果(思い込み)だけで、ただのポリエステルのTシャツと何も変わらないのではないか?」

売り場の前でパッケージの裏側を読んだり、スマホで口コミを検索したりしながら、15分ほどパッケージを手に取ったまま葛藤しました。しかし、毎朝ベッドから起き上がる時のあの足の重さと、怪我への恐怖から少しでも解放される「きっかけ」になるのなら、今の自分への必要な投資だと割り切ることにしました。僕は白の半袖Tシャツのパッケージをひとつ掴み、レジへと向かいました。

2. 那覇の熱帯夜と、柔らかな肌触りの儀式

その日の夜、ジョギングの汗をシャワーで洗い流した後、さっそく買ってきたばかりの「EXセリアント」に袖を通してみました。

素材はポリエステルとポリウレタンの混紡ですが、スポーツ用の速乾Tシャツによくあるようなツルツル、ゴワゴワとした冷たい感触ではありませんでした。肌に触れると、少ししっとりとしていて、優しく吸い付くような柔らかな感触です。首周りや脇の下にも締め付け感が全くなく、ルームウェアとして非常にリラックスできる着心地でした。

那覇の夜は10月に入ってもまだ生ぬるい風が吹き、エアコンを消して寝るには少し寝苦しい気温です。エアコンの温度を冷えすぎないように設定し、いつも通りスマートウォッチ(Fitbit)を左腕にしっかりと巻き直してベッドに入りました。

「これで明日の朝、少しでも身体が軽くなっていればいいな」

新しい道具を手に入れた時の、あの子供のような微かな期待感を胸に目を閉じると、いつもより少しだけ早く眠りに落ちていったような気がします。

3. 睡眠時間は5時間50分。Fitbitが記録した「安心感」

翌朝、窓から差し込む朝日で目が覚めました。ベッドの中で一番にスマートウォッチのアプリを開き、昨晩の睡眠記録を同期させます。

スマートウォッチの画面に表示された睡眠時間は「5時間50分」、睡眠効率は「90%」でした。詳細なグラフの内訳を見ると、レム睡眠が「1時間39分」、深い睡眠が「1時間8分」と記録されています。

もちろん、これは医療機器ではなく腕時計のセンサーによる推定値に過ぎません。これまでの僕の平均的な睡眠データと比較して、深い睡眠の時間が劇的に跳ね上がったというわけではありませんでした。

しかし、この夜は途中で尿意で目が覚めたり、寝苦しさで寝返りを打ちまくったりするような「中途覚醒」がほとんどなく、グラフが非常に安定した波を描いていました。僕にとって重要だったのは、「数字が劇的に良くなったこと」よりも、「途中で起きずに安定して朝まで眠れたという事実を、数字として確認できたこと」です。

睡眠の質というものは、メンタルの状態に大きく左右されます。「リカバリーをうたうウェアを着て寝た」「安定した睡眠が取れているというデータが出た」。この客観的な事実を目にすることで得られる精神的な安心感こそが、今の僕には何よりの特効薬だったのかもしれません。

4. 翌朝のリアルな体感と、回復へのパラダイムシフト

データだけでなく、起きてベッドから降りた時の、僕自身の「体感」にも小さな変化がありました。

いつもなら、足を床につけた瞬間にふくらはぎや太ももに「ズーン」と響く鉛のような重さが、今朝はベールを一枚剥がしたように、ほんの少しだけ軽く感じられたのです。階段を降りる時の、膝の関節がギシギシと軋むような重だるさも、心なしか和らいでいるように思えました。

ただ、これが「EXセリアント」の特殊な繊維による直接的な血行促進効果なのか、それとも前日の運動量やその日の気温、あるいは「良いものを着た」というプラシーボ効果なのかは、たった一晩の着用では断定できません。人間の身体はそれほど単純ではありません。

しかし、今回の体験を通じて、僕の中にフルマラソンに向けた非常に重要なパラダイムシフト(意識の転換)が起きました。

それは、「道具に投資をして試してみるという行動自体が、自分の休養について真剣に考えるための強力なスイッチになる」ということです。

これまでの僕は、「どうすればキロ何分で走れるか」「どうやって歩数を稼ぐか」といった、身体に「負荷をかけること」ばかりに意識が向いており、身体を「休ませること」には無頓着でした。しかし、睡眠環境に自腹で投資をしたことで、「今日はウェアの効果を最大限に引き出すために、スマホを見ずに早めに布団に入ろう」「寝る前のアルコールはやめておこう」と、睡眠に対する姿勢そのものが前向きに変わったのです。

5. まとめ:走る日も、休む日も、スタートラインに続く道

今回、イオンのリカバリーウェア「EXセリアント」を着て寝てみた初日の実録は、僕にとって単なる商品レビューではなく、「睡眠環境を見直す」という大きな一歩になりました。

運動経験ゼロからNAHAマラソン完走を目指す50代の僕にとって、走ることと同じくらい、いや、それ以上に「意図的にしっかり休むこと」が大切なのだと改めて痛感しています。ウェアの効果がどれほどあるかは、これから数週間、数ヶ月と着続けてみなければ分かりません。

でも、あのしっとりとした柔らかな着心地とともにベッドに入る時間は、今の僕にとって欠かせない大切な「休息の儀式」になりつつあります。

本番まで残り数ヶ月。これからもスマートウォッチのデータを記録しながら、焦らず、自分の脆い足腰と対話していこうと思います。走って汗を流す日も、ウェアを着てしっかり休む日も、すべてはNAHAマラソンのスタートラインにつながる大切な時間。50代の僕なりに、一歩ずつ泥臭く準備を進めていきます。